鈴木勝久会員 2009.1.28例会

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「職業について」
 本日はこのような時間を頂きありがとうございます
私はまだ40 過ぎたばかりでロータリーも入会してやっと半年を過ぎたところで、諸先輩の前で話させていただくようなものは何もありませんが、渕頭で書店業を営んでおりますので、本日は書店業界の話を少しさせていただきたいと思います。

 うちの会社は父がガソリンスタンドを始めるために設立した会社でありまして、社名は今でも鈴木石油鰍ニ称していますが、今は書店業と不動産賃貸がメインの会社であります宝町の明文堂が親戚であり、義理の兄が守谷で書店をやっていたこともありまして、自分も書店をやろうと思ったのが15 年ほど前でした。

 そのころは100坪くらいの個人書店がまだまだ何とかやっていけた時代でありまして、バブルははじけていたが、書店は景気の影響は受けにくい業界だとされていました。

 書店業界で今問題になっていることはさまざまあります。

 大型書店(500 坪以上のメガブックセンター)の出店(双葉図書(広島)、くまざわ書店のアカデミア(東京八王子))
万引き問題(経常利益が1%以下という店で万引きロスが1%を越える店もある)ブックオフなどの中古本屋アマゾンを代表とするインターネット上の書店。

 今日はインターネットの書店(ネット書店)と店頭販売の書店(リアル書店)の関係の話をしたいと思います。
まずこのアマゾンという通販サイトについて話したいと思います。

 最初は1994 年にアメリカのシアトルに拠点を置く通販サイトとしてオープンしたのをきっかけに、現在はヨーロッパアジアの六カ国に進出しています。

 日本におけるアマゾンジャパンという法人は2000年にオープンしました。最初は書籍のみ扱う通販サイトでした。

 ちなみにアマゾンの名前の由来は、アマゾン川の流域が密林であり、密林の木のように大量・多種の商品を扱っていることから名づけられたそうです。

 現在ではCD、DVD、おもちゃ、食料品、家電製品、など一般的な消費財はほとんど扱っていますアマゾンジャパンの売上が1500 億、経常利益が35 億で、紀伊国屋書店の売上が1180 億、経常利益が4億と言われており、極めて利幅の差が大きくなっています。

 この差はどこから来るのかというと、リアル書店は委託返品条件で仕入れをしますので掛け率が77%で仕入れるのに対し、アマゾンは基本的には店頭在庫を持たずにお客様から注文にあった商品を倉庫から直接送品するので、出版社からは買い取り条件で仕入れることができるので掛け率が70%で仕入れることができるため、利益にこれだけの差が出てくると考えられています。

 しかしお客様に販売する本の値段は基本的に同じなのに、なぜアマゾンがこれだけ消費者に指示されているのでしょうか?

理由は主に2 つあります
@ 流通の速さ
A レコメンデーション機能

 レコメンデーション機能とは、顧客の購買傾向を踏まえたうえで商品をサイト上やダイレクトメールによって推奨するなどの、営業・宣伝活動を自動で行う機能を意味します。

 こういうことはどんなに有能な店員がいても、個別にお客様の趣味嗜好を把握することはリアル書店ではできません。
ネット書店ならではのこのような機能がうけているわけです。いま書店、特に個人経営の書店がバブル崩壊後の長期不況の影響で他の業界と同様にどんどん潰れていっています。

 原因はさまざま(経営手法が悪い、大型店や中古書店の影響など)です。

 アマゾンでの取扱商品は1000 万点を超えるといわれている
 ちなみに1000 坪のつくばのくまざわアカデミアは60 万点 (ベルは6 万点)

 要はふつうのリアル書店では置く商品が限定され、商品量がネット書店より少ないとなってくるので、アマゾンを見た方がたくさんの商品があるとなってくる

 それに対してリアル書店ではどう対応するのか?

 売り場スペースが限られてくるので、売れる本だけ置くようになる。すると出版社調べのランキングで商品構成をするようになる。そして同じチェーン店でもないのにどこの書店へ行っても同じような商品を置くことになる。
お客さんの方もランキングの本だけを選んで買う傾向が強くなっていく。

 最近の傾向だと思いますが、話題になったものには極端に集中して、ブームが去れば見向きもしない。書店業界だけに限らない消費者の傾向であると思います。

 インターネットで情報が氾濫する中、その中から有効な情報を選択するツールとして「ランキング」というものに依存している傾向があると思います。最近のTVの情報番組は何でも「ランキング」というものは必ず出てきます。私たちは「ランキング依存症」などといっています。

 これはランキングの話ではありませんが、先日芥川賞と直木賞の発表がありました。

 2003 年に綿矢りさという作家が「蹴りたい背中」という作品で芥川賞を受賞しました。当時19 歳での受賞でしたので、ニュースでも話題になったと思うので、読まれた方も多いと思います。

 しかし受賞には賛否両論ありました。19 歳でなければ書けないすばらしい表現だという人と、何が言いたいのかよくわからない、何も心に残らない作品だという両極端の意見です。

 しかし、この作品はニュースでも取り上げられただけあり、内容うんぬんより話題性が先走り、近年の芥川賞の中では飛び抜けて売れました。

 しかしこれは非常に怖い傾向ではないでしょうか?
情報やランキングに左右され、物事の本質を見極めようとしない人たちが増えている。特に10代20代の若者にこの依存型が多いように思います。しかもメーカー側もこの傾向に追随し、話題になったものを集中して扱い、少数派はどんどん隅に追いやられてしまう。

 現代ではPOSレジというものが、ほとんどの小売業界で使用されているので、販売データにより商品構成を決定していくというのは、当然ではありますが、ただそれだけに依存していると、大手コンビニと同じでどの店でも同じ品揃えになってしまう恐れがあります

 そうなると、今度はアマゾンのようなネット書店で本を調べて購入した方が、お客さんにとっては色々な本が紹介してもらえてよいということになり、リアル書店は不必要になるという傾向がどんどんすすんでいくということになります。

 そうすると今度はネット書店の品揃えに対抗するために、1000 坪クラスの大型書店が出店してくるようになり、100 坪クラスの個人書店が潰れていくという図式が生まれてくるのです
他の業界はどうでしょう?市場が情報に大きく左右されるという傾向は年々強くなっているのではないでしょうか?

 需要と供給の関係ですから悪いことではないとは思いますが、偏りすぎるのも問題があり、業界全体がそういう方向にだけシフトしてしまうのは怖い傾向だと思います。

 ただし書店のような少量多品種の業界では、ランキングには入っていないが面白い本というのはたくさんあり、流行や消費期限というものにかかわらない商品でありますので、他の業界から比べればまだ多様性があると思います。

 ネット書店で本を買う、通販サイトで商品を買う、というのもショッピングの一つの楽しさではあると思いますが、ネット上の仮想世界ではなく、実際に商品を手にとって、選び、考えて、好きな物を買うというショッピング、小売業の楽しさというものも忘れて欲しくないと思います。

 今日は、この話の中に結論があるわけではありませんが、ひとつこれに関連したエピソードがありましたのでこれを紹介させていただいて、私の托話を締めたいと思います。

 これはあるブログに載っていた話ですが、友人の19 歳になる妹が引きこもりでニートになってしまい、4 年間家から外出したことがなかったのが、本を買うことがきっかけで少しずつ引きこもりから回復していく話です。

 このブログを書いた人は本の書評をHPで紹介している人ですが、わかりやすいように今日は私に置き換えて話をして行きたいと思います。以下、別紙参照
 

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