松村仁寿会員 2009.10.7例会 

「職業奉仕月間に因んで」
 ロータリーにとって「奉仕」という言葉は夫唱婦随のような存在と思われます。しかし最も身近なこの言葉が、最も深い意味を持っていることも事実です。

 簡単に使われる言葉。しかし見極める事の難しい言葉。そう言えると思います。ロータリーは「奉仕」を英語で「SERVICE」=サービスと表現していますが、私たち日本人が「サービス」という言葉を使うとき、どちらかというと「こち
らの好意で、相手が得をする」というような意味合いがあると思います。

 「サービスさせて頂きます」「これはサービスですから」「謝恩サービスだから、景品をつけておきました」などの言葉には慇懃な響きはあるものの「どうだ、トクしたでしょう」みたいなニュアンスが感じられます。それはそれで社会一般の流れだから良いのですが、ロータリーの「奉仕」つまり「サービス」という言葉はそんなものではないのです。

 「サービス」=SERVICE は「サーブ」=SERVE の名詞形で、本来の意味は、神に、主君に、国家に、思想などに「仕える」という使われ方をします。例えば医療機関なら「地域を受け持つ」「必要を満たす」という使われ方をします。

 従って「サービス」の本来的な精神は「自分の役割は、地域、国家、人々のために、その要望に応えるよう、真摯な心で最大限努力する。お仕えする」というものです。
四大奉仕部門のひとつ「職業奉仕」は、英語で「VOCATIONAL SERVICE 」と訳されますが、


 VOCATIONAL=VOCATION の形容詞形という言葉は、「神から与えられた天職」というのが本来の意味です。従って職業奉仕とは、「与えられた天職をもって、社会、人々の幸せのため、誠心誠意お仕えする」という意味なのです。

 こう分析すると、ロータリーで使われる言葉が、我々日本人の認識と大きく離れている事がわかると思います。こう考えると、「サービス」という言葉の意味の深さ、重い響きがあることが解りますが、同時に、私たちは日常「サービス」を本来の意味として捕らえず使っていることが解ります。

四つのテスト

 先ず最初に考えなければならないことは、この四つのテストは、決して事業の倫理基準や商道徳を高める事を目的に作られたものではなく、倒産の危機に瀕していた調理器具メーカーを債権させるために作られたきわめて現実的な基準だということです。すなわち四つのテストというのは、商取引をする当事者同士が、納得ずくで取引きできる基準を示したものなので、社会で一般的に適用するとは限りません。

 よく、癌の告知や死期の告知に四つのテストを適用すべきか否かとか、醜い女性に正直に醜いと告げるべきか否かと言った議論をする人がいますが、四つのテストはあくまでも商取引にのみ適応するように作られた基準であることを忘れてはなりません。

 商取引はシビアなものですから、それを厳密に判定する基準が必要ですが、一般の生活に夢や希望を与えるためにつくささやかな嘘は、人生の潤滑油として必要不可欠なものと思います。

 
Four-way test(四つのテスト)・・・・「事業を繁栄に導くための四通りの基準」ならば、当然Four-way testsと複数形になるはずです。これが単数形であるのは、事業を繁栄に導くためには四通りの基準を一つずつクリアーすればいいのではなく、四つ纏めたものを一つの基準として、その全てをクリアーしなければならないことを意味します。

 ロータリーの綱領がObject of Rotary と単数形であり、四つの項目が渾然一体となって、一つの綱領を形作っているのと同様です。

 Is it the truth? (真実かどうか)・・・・「嘘偽りがないかどうか」という意味です。商取引において、商品の品質、納期、契約条件などに嘘偽りがないかどうかは非常に大切な基準です。真実というのは「80%の真実」という言葉が示すように、人間の心を通じたアナログ的な判定であるのに対して、事実とはその事実があったのか、無かったのかの二者択一を迫るデジタル的判断ですから、ここでは「事実」という言葉を用いるべきでしょう。

 Is it fair to all concerned? (みんなに公平か)・・・・fair とall concerned という言葉の翻訳に問題があります。Fair は公平ではなく公正と訳すべきでしょう。公平とは平等分配を意味するので、例え贈収賄で得たunfair 不正なお金でも平等に分ければそれでよいことになります。

 All concerned はall だけが訳されており、肝心のconcerned が省略されています。冒頭で述べたように四つのテストは「商取引」の基準として定めた文章ですから、このconcerned(関わりのある人、関係する人)は「取引先」のことを意味する事は明白です。従ってこのフレーズは「すべての取引先に対して公正かどうか」ということを意味します。

 Will it build goodwill and better friendship? (好意と友情を深めるか)・・・・goodwill は単なる好意とか善意を表す言葉ではなく、商売上の信用とか評判を表すと共に、店ののれんや取引先を表します。すなわち、その商取引が店の信用を高めると同時に、よりよい人間関係を築き上げて取引先を増やすかどうかを問うものです。

 Will it be beneficial to all concerned? (みんなのためになるかどうか)・・・・Benefit は「儲け」そのものを表す言葉です。商取引において適正な利潤を追求することは当然なことであり、決して恥ずべきことではありません。但し、売り手だけが儲かった、また買い手だけが儲かったのでは公正な取引とは言えません。

 その商取引によって、すべての取引先が訂正な利潤を得るかどうかが問題なのです。

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