米山奨学生 金 ウンビさん 2014.9.17

 私は,修士課程から「音楽と身体接触を活用した運動がもたらす心理・社会的効果」を検討することを目的として,研究を進めてきました。

 私がこの研究を始めようとした動機・きっかけは,研究生の時代に,あるテレビ番組を見てからです。それは,「無言社会」というタイトルの番組でした。

 番組では,携帯やパソコンの使用が多くなった現代社会において,人間と人間の直接なつながりが急激に減っていることが問題となり,それが友人や家族の関係まで悪影響を与え,どんどん人間関係が希薄化されていく社会的な問題を指摘していました。

 この番組を目にしてからは,人と人の絆がとても必要になってきた現在,他者との関係を豊かにすることができる手段として運動やスポーツの価値を伝えたいと考えました。

 さらに,ただ運動が良いということよりも,どのような運動をすれば,心理的にも,社会的にも効果及び価値が高い運動になるのかという考えから,私が実践してきたエアロビクス運動が持つ「音楽」と「身体接触」の要素に着目することになりました。

 博士論文では,運動時に音楽や身体接触の要素を活用することが運動の楽しさを高め,ポジティブな気分を増加させるなど,心理的な効果が通常の運動より大きいことが検証されました。
 
また,音楽と身体接触を活用した運動の実施によって対人行動が積極的になり,運動を一緒に実施した他者への好意や親密感,信頼感などを高めることが可能であることが分かりました。

 このような成果は,人間関係が希薄になった現代の社会において,他者と行う活動としての運動の価値を高めることに貢献しうるものであり,有益な心理・社会的効果を持った運動を活用することが他者との交流を促進させる手段として有効であることを示したと考えられます。