米山奨学生 ヨードスラーン・パティポンさん 2010.10.13

 皆様、お久しぶりです。

 私は、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程世界遺産専攻2 年のヨードスラーン・パティポンと申します。どうぞよろしくお願い致します。この度は、ロータリー米山奨学金をいただき、身にあまる光栄に存じております。

 また、ロータリアンの皆様の貴重なお時間をいただき、このような素晴らしい機会を開催していただけますことを深く御礼申し上げます。

 最近は、水海道ロータリークラブの活動に出席することが出来なく、大変申し訳なく思っております。私は、7月から9月の3ヶ月間、タイにありますユネスコ・バンコク事務所にてインターンシップをしてまいりました。ユネスコ・バンコク事務所は、アジア太平洋地域全体を管轄する役割と同時に、cluster office として、タイ、ラオス、ミャンマーを直接国レベルで支援する任務も担っています。

 私はインターンシップ中に、主に「水中文化遺産の保護」と「水中考古学」の展覧会の準備に携わりました。また、文化遺産保護のためのユネスコ文化遺産保全のためのアジア太平洋遺産賞のプロジェクトの準備を行ってきました。

 今年は、日本のプロジェクトの一つであります横浜市中区の赤レンガ倉庫が、ユネスコアジア・太平洋遺産賞優秀賞を受賞しました。

 今回のスピーチで何をお話したらよいか色々悩みましたが、私の日本へ来た理由と、修士論文の研究について、また今後の展望についての3点をお話しさせていただきたいと思います。

 まず、日本留学を決める経緯についてです。私は建築を研究しておりますが、文化財建造物の保存修復と活用に興味があります。来日する前に、東?アジアにて世界遺産地区や歴史地区等のさまざまな文化財の保存と活用に関するプロジェクトを行っていました。その文化財保存と活用の課題についてさらに詳しく勉強したいと思い、留学を決意しました。

 アジアの中で、文化財保存制度やマネジメント計画の分野おいて、最も進んでいる国は日本です。日本には多種多様な文化財の事例があります。そのため、日本において、文化財の保護と活用、また国民の文化的向上について学びたいと考えました。これらの動機を踏まえまして、筑波大学世界遺産専攻に進学しました。

 この専攻では国内外における遺産に関する美術史、建築史、建築計画、文化的景観、観光学、分析化学などを総合的に研究しています。また、日本の文化庁の協力を得たり、国外の関連機関と連携しプロジェクトを行うこともあります。
筑波大学世界遺産専攻では、多様な遺産の保存に必要な方法論と遺産マネジメントに関する知識を修得することを目標にしています。

 このことにより自分の保全に関する経験を踏まえ、専門知識を積み重ねることができました。さらに、自分の専門的な目標を達成したく思っております。今後も、国内外の遺産保護方法に係わる教育プログラムに関わることでタイの文化財保護制度に貢献しようと努力します。

 次に、修士論文の研究テーマについてですが、「タイ王国の世界文化遺産「古都アユタヤ」における建造物遺産インタープリテーション」という論文の内容です。アユタヤ遺跡建造物遺産での、インタープリテーションについての情報提供の過程に関する研究です。

 私たちは文化遺産に関わるうえで、遺産に対してどのような視点を持って見ているのでしょうか。デザイン、形、大きさ、色彩、景観、材料、構造等、遺跡そのものの見方は、見る人それぞれであり多種多様にあります。そのなかでも建造物の構造と建築方法、修理の行われ方は、文化遺産を目の前にしたときに、視覚的な情報のみでは、なかなか理解しにくいものです。

 本研究では、遺跡建造物遺産に関する情報をわかりやすく伝えるように3Dコンピュータグラフィックスを用いたプレゼンテーション方法を採用しました。研究方法では、日本の世界遺産の中から「平城京」の事例比較とともに、専門家や観光実等へのヒアリングです。

 また、アユタヤ遺跡建造物遺産地域での現地調査を行ない、?態および方向性の分析と把握を行なっています。現在の研究の進捗状況ですが、教育とインタープリテーションの理論と日本の事例研究をまとめ、現場調査に関わる資料づくりのための情報をまとめています。

 最後に、世界遺産専攻修士課程修了後についてですが、タイ王国の文化遺産の保護を行いたいと思っております。そのために文化的景観と伝統的な建造物地区等における保存修復と活動に関する調査研究する職業に従事したいと考えております。

 また、ユネスコやその他の国際機関等のアジア太平洋における運営されている文化財・文化遺産に関するプロジェクトに参加したいと思います。これからも頑張っていきたいと思います。

 皆様の中で、海外旅行や留学などしたことがある方がいらっしゃるかも知れませんが、私も今回、日本で2年間、留学をする機会を得ることができました。日本の様々な場所を訪ね、非常に素敵な時間を過ごしております。日本の優美な伝統文化を学んで、総合的な理解と把握に努めていきます。

 最後に、このロータリー米山基金の奨学生に選ばれましたことに対して、ありがたいという思いとともに、その重みを忘れないでいたいと感じております。

 ご静聴ありがとうございました。