常総市立水海道小学校 教諭 鈴木忠雄様 2007.4.4

「金管バンド指導を通して」
◆はじめに◆
 マーチングバンドとは、演奏しながら様々隊形をつくる「総合芸術」といわれています。元々行進が中心であり、アメリカに伝わってフットボールのハーフタイムショーに用いられ、現在のようなスタイルとなったといわれています。

 現在アメリカでは「DCI(Durm corp International)」という世界大会が行われており、日本からも沢山の青年がチャレンジしています。同様に日本でも数々の大きな大会が開催されています。

 水海道小学校は3年前から現在のマーチングバンド活動に変更し、3年連続して全国大会出場、昨年・一昨年前と2年連続日本一の成績を収めいています。


◆音楽の多種多様性◆
 音楽には様々なジャンルが存在します。軽快なマーチから子守唄・・・・・音楽は生活の中でも必要不可欠なものであり、人生を豊かにするものでもあります。「聴く」だけでなく、「演奏する」ことでより音楽の世界を広げる事ができます

◆音楽とマーチングの教育的意義◆
 ○音楽指導の中で・・・・「ドミソ」の和音を美しく作るためには実は細かい調整が必要です。「ピッチ」を調整することでより美しい和音を奏でることができます。仲の良い並びの音はそれなりに響きますが、隣同士の音はぶつかることがあります。

 しかしピッチを調整することで思いがけない響きが生まれることもあります。人間関係も同様、自分自身の身の振り方で誰とでも溶け込めるような人間作りができるようになることを、音楽はさりげなく教えてくれているような気がします。

 ○究極の集団演技「マーチング」・・・・80名が同じ間隔(インターバル、ディスタンス)を保ちながら動く、同じ拍数で歩く、同じアクションをする・・・。一人のミスが大会では命取りになります。その中で培われるのが「連帯感」「責任感」です。一人が欠けてもいけないチームプレー。

 マーチングの最大の魅力は「全員がレギュラー」ということでしょう。メンバー一人一人が主役です。こんな大人数のチームプレー、なかなかあるものではありません。


◆本校のスタイル◆ 「小学生らしさ」「美しい音楽」
 Simple is best わかりやすさ、世代を超えて理解できる曲、構成を目指しています。しかし、指導陣はいつも自分との戦いでした。「美しさを求めれば迫力不足と思われないか」「旗がないことや左右対称のドリルフォーメーションが簡単に見えてしまわないか」でも2年連続日本一の実績から「これでいい」→「これがいい」→「これしかない」に変わっていきました。

 基礎基本を大切にするスタイルが評価されたことはこの上ない喜びでした。こだわりを貫くことの大切さを知りました。「真似できそうでできない演技」なのです。

◆指導スタッフ◆
 本校の指導スタッフはすべて私の先輩や同級生、または音楽関係で知り合った仲間たちです。本来、こういった音楽の世界では講師に対し「編曲料」「ドリルデザイン料」「指導料」が発生しますが、身内スタッフのお蔭でボランティアで参加していただいています。

 「プロの講師を使わないで全国に行く事は可能か??」スタッフは研修に励みました。様々な演奏会に出向いたり、ビデオやDVDを観たり・・・・。素人講
師陣のパワーは強大です。前任校で培った指導方針は水海道小学校を初年度から全国大会の舞台に押し上げました。

 苦手を得意にするプロセスは辛い事の方が多いのですが、「子供が好き」「音楽が好き」という思いがあれば何とかなるものだと感じました。達成したときの喜びは大変大きなものとなりました。優れた人材は実はすぐそばにいるのです。築き上げた人脈とネットワークは私の宝です。

◆今のこどもたち◆
 「自己中心」「運動嫌い」「ゲーム大好き」「学力重視」・・・・現代の子どもたちは人付き合いが苦手です。核家族化、放課後の塾通いなど、多くの人とふれ合う機会が少ないことなども理由に挙げられるでしょう。共働きの多い現在、一人の時間をゲームやビデオで過ごす子供たち。完全週5日制の導入は、受け入れ先の無い子供たちの「居場所作り」が整備されないまま実施された感があります。

 子どもたちは本来いつの時もキラキラ輝いているべきです。学校の特色作りも叫ばれている今だからこそ校内の活動や生涯学習活動を活性化させる必要があると考えます。子どもは「スポンジ」無限の吸収力と力をもっているのです。「子どもたちの笑顔を大人が奪ってはならない」

◆伝えたいこと◆
  「夢は追いかけるものではなく、つかむもの」
 夢を持つ人は努力を惜しみません。全国大会に行きたい子どもたちは時間を惜しんで練習に励みます。塾の日程を変えてでも、みんなのために時間を作ります。熱があっても練習に参加しようといます。そこに「夢」があるから・・・。夢を実現できた時、大きな自信となるはずです。

 泣き笑いしながら過ごした日々は消して平坦なものばかりではありません。夢に向かって親子共々みんなが夢中になれるマーチング。子どもたちは様々な体験を通して大きく成長するのです。「努力のあとに感動、喜び、そして自信」

◆さいごに◆
教師の仕事相手は「人間そのもの」です。人間形成における大切な発達段階のこどもたちの成長には様々な「体験」が必要です。大人からのアドバイス、子どもたち同士のふれあい、先輩後輩の関係などなど、体験の中から学ぶものは大変多いのです。

 人間同士のつきあいが疎遠になりつつある現在、子どもたちの健全な育成に必要なのは「子どもたちの活躍の場を作り、広げる」ことであると考えます。

 それができるのは子どもたちを取り囲む私たち大人であると思います。本校の校歌に「みんな励んで日本の立派な柱となる日まで希望に輝き伸びていく・・・・」という歌詞があります。

 水海道の子どもたちが立派な日本の柱となれるよう、応援していきたいと思います。
No music No life